離婚を考えている場合に、子供の親権を獲得するために、子供を連れ去って勝手に別居するということは、結構頻繁に行われていたんですよね。
よく「夫が家に帰ったら妻と子供の姿がなかった」ということはあり、妻だけでなく子供まで姿を消してしまって夫としては非常に焦る瞬間だと思います。
特に夫婦で子供をかわいがっているような状況で、夫婦で離婚を考えていて離婚による親権トラブルが予測されるような場合には、妻が子供を連れて実家に帰ってしまうということは珍しくないです。
また夫が勝手に保育園で子供を連れ去るということもあります。
その背景には子供の連れ去りによって親権獲得で有利になるという背景があったからです。
妻や夫が親権トラブルで子供を連れ去る原因
離婚する際には事前に子供の親権の所在を明らかにしておかないと離婚することはできないです。
つまり離婚することで合意していても、親権が決まらずに離婚調停や離婚裁判に発展することがあるということです。
親権については基本的に母親が有利だということは間違いないです。日本では母親が主体になって子育てをすることが普通になっていおり、どうしても親権では母親が優先されることになります。
特に子供が赤ちゃんだったり、幼児だったりするような場合にはほぼ間違いなく母親の親権が認められます。
そのため親権獲得のことを考えるとどうしても夫側は不利になります。
しかし親権については「現状維持の原則」というものがあり、これは子供の現状を尊重して、離婚後に住環境などを大きく変えないようにしようというものです。
つまり現在住んでいる状況に問題がない場合には、そのまま現状維持して今住んでいる親の方に親権が認められるというものです。
親権で不利な側は「現状維持の原則」を知って、それが子供の連れ去りの原因になっているということです。
子供の連れ去り別居の違法性とは
子供の連れ去りの別居については、昔は子供を連れて別居した方が有利になるということが知られていたので、普通に行われていたのですが、近年ではこういった強引な子供の連れ去りについて違法性を指摘する声が高まっています。
昔は親権争いによる離婚裁判が長期化して、その間に別居して子供を連れている側が育てることになるので「現状維持の原則」によって、子供を連れている側が親権獲得に有利になってしまって、「連れ去り勝ち」という現状がまかり通ってしました。
しかしハーグ条約の影響で、子供の意思を尊重しない連れ去り行為については違法という見解が示されるようなってきているので、安易な連れ去りは親権獲得で不利になる可能性が出てきています。
子供を連れて別居する際には事前に夫や妻と話し合って行うことが望ましいですが、DVなどがある場合には置手紙などで知らせてから家を出るという配慮も必要になります。
子供を連れて別居する際には、子供の意思を確認して、しっかりと夫や妻に別居する相談をすることが大事になってきます。
もし離婚前提での別居ということなら、弁護士等に相談して、適切な方法で子連れ別居をすることが望ましいです。
子供の連れ去りを防止する方法
子供の連れ去りを防止をするというのは簡単なことではないですが、一番やってはいけないことは違法に子供を連れさるという行為です。
子供を取り戻すためとはいえ、違法に子供を連れ去ると親権争いでも不利になり、非常にマズいことになります。
違法な子供の連れ去りとは
- 子供の意思を確認せずに子供を連れ出す
- 家に押し入って子供を連れ去る
- 保育園や小学校で待ち伏せて子どもを連れ去る
基本的に子供の意思や監護親の意思を確認せずに勝手に子供を連れ去るという方法は違法になるので注意しましょう。
では合法的な子供の連れ去り防止法とはどのようなものなのでしょうか?
裁判所に保全処分を申立てる
子供の連れ去りの防止として一番一般的な方法が裁判所に保全処分を申立てることで、これは簡単に言うと「子供をすぐに引き渡せ」という申請です。
手続き自体は弁護士の方でやってくれるので問題はないかと思います。別居で子供を連れ去られているような状況だと、離婚について話している場合もあるかと思うので、担当弁護士に相談しておくといいです。
ただ保全処分の結論については、半年くらい必要になることも多く、保全処分での結論は離婚調停や離婚裁判にも影響を与えます。
そのため保全処分の話し合いについては、離婚調停などと同時に話し合わせることが多いようです。
子供を連れ去られた場合には、できるだけ早めに保全処分を申立てるようにしましょう。
人身保護請求を申立てる
子供の連れ去り防止方法として緊急性があるような場合に利用を検討したいのが「人身保護請求」という方法です。
人身保護請求は保全処分と違って最短で2週間程度で決定が出ることもあるので、非常に強力で効率のよい連れ去り防止方法です。
特に子供が違法に拘束されているような場合だったり、相手の監護下の状況が劣悪で子供の健康が損なわれている場合だったり、子供が義務教育を受けられてないような状況で認められる手続きです。
すぐに子供を取り戻さないと、子供の福祉が損なわれるような状況の場合に、緊急的に認められる方法になります。
夫や妻が子供の引渡しを拒否した場合の対策方法とは
裁判で子供の引渡し要求が認められたとしても、相手である夫や妻が簡単に子供を引き渡してくれないことがあります。
裁判所でこちらに親権があることが認められたのだから、こちらに子供を引き渡すのが筋だと思いますが、それを無視する親もいます。
その場合には勝手に子供を連れ出しても問題ないのでしょうか?
実は子供の引渡しを拒否された場合にはさらに別の手続き方法があります。それは「直接強制」と「間接強制」という手続き方法です。
間接強制とは
間接強制は子供を引き渡すまでの間に「一定額の金銭を支払い続けろ」と命令する手続きのことです。
つまり金銭面などから間接的に子供の引渡しを強制するという手続き方法になります。
しかし、相手側がに支払い能力がないような場合には、有効な効果を得ることができないというのがデメリットです。
つまり「ない袖は振れない」ということで、間接強制が認められたとしても相手によってはあまり意味がない可能性があります。
そのため確実に子供を取り戻すなら「直接強制」になります。
直接強制とは
直接強制とは「裁判所の立会いのもとで子供を強制的に連れ帰る」という手続き方法になります。
直接強制が認められれば執行官らによって子供を直接合法的に連れ帰ることができるので最終手段とも言える方法になります。
ただ直接強制で相手に逃げられてしまっては意味がないので、事前に住居などの間取りを全て把握して、絶対に逃さないという段取りをつけて、相手の家に踏み込み子供を保護することになります。
近年では子供の学校や保育園帰りに保護するというのは、子供への影響もあるということで中止されているようです。
子供の連れ去り防止方法については、このように法律によってしっかりと手続き手順があるので、事前に弁護士に相談して有利に親権が獲得できるようにするといいです。